ボツワナ・南アフリカ派遣報告: 基盤研究Sの可能性を探る
京都大学
アフリカ地域研究資料センター・特任研究員
林耕次
令和4年9月24日から10月2日にかけて、南アフリカ共和国とボツワナ共和国に渡航した。報告者にとってはいずれも初めての訪問地であり、プロジェクト代表である高田教授に同行しながら、おもにボツワナ首都ハボローネのボツワナ大学において研究者と打ち合わせを行った。
ボツワナ大学では、カウンターパートである人文学部のMaitseo M. M. Bolaane 准教授に対してプロジェクトの概要を紹介しつつ、高田教授より構想についての詳細な説明がなされた。ほかにもサン研究センターのLeema A. Hiri氏、健康科学部のRoy Tapera上級講師、同Patience N. Erick上級講師、同Tshephang Tumoyagae講師、社会科学部のOleosi Mogametsi Ntshebe 上級講師らと面会し、とくに報告者が関心を持つアフリカ狩猟採集民としてのサンに対する現地研究者の立場やボツワナにおけるサニテーション・衛生に対する状況に注目して話を伺った。
在ボツワナ日本国大使館では、村井参事官ほか館員の方々よりコロナ禍、および現状におけるボツワナの情勢について情報を得ると共に、プロジェクトの概要を踏まえてのボツワナにおける狩猟採集民(サン)の一般的な認識について理解を深めることができた。その後、JICAボツワナ事務所を訪問して江口支所長らよりボツワナにおけるJICAの取り組みについて詳しい説明を受けつつ、とくに本プロジェクトに関連した教育分野での状況について、ボツワナではローカルな言語を初等教育に取り入れる傾向があるなどの情報を得ることができた。
ボツワナ国立博物館&アートギャラリーでは、サンをモチーフとした絵画やオブジェ、工芸品を観覧した。教育に加えて、工芸や芸術の分野からボツワナにおいてサンがどのように表象されているのかも興味深い。
ボツワナ滞在中は、各所において高田教授と同行したこともあり、ボツワナにおける研究の蓄積や訪問した研究室等に関する情報をはじめ、ボツワナという国に関するあらゆる情報を直接伺うことができたのは僥倖であった。ただし今回、報告者のボツワナ滞在期間が限られていたこともあり、十分な議論ができなかったことや今後のボツワナにおけるプロジェクトへの関与について、明確なビジョンが見いだせなかった点は心残りであった。今後とも3カ国での比較研究というプロジェクトの特徴を踏まえつつ、報告者自身の得意分野を活かせるよう励みたい。
*報告者は今回往復ともヨハネスブルグ(南アフリカ)を経由したが、ボツワナとの国境越えや長距離バス移動(復路)の経験は、治安が不安視される南アフリカにおいて、今後大学院生などプロジェクトに関わる方々へ情報を共有しておきたいと思う。