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  3. 高田明 教授 アイルランド派遣報告(2022/06/25-2022/07/02) 


アイルランド派遣報告: CHAGS13への参加・発表

京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
高田明

写真1 ダブリン大学のキャンパス.

令和4年6月25日から7月2日にかけて,アイルランド共和国のダブリンにあるダブリン大学(写真1) を訪問し,同大学で開催されたThe 13th Conference on Hunting and Gathering Societies(CHAGS13)に参加,研究発表を行うと共に,CHAGS13の出席者とアフリカ狩猟採集民・農牧民のコンタクトゾーンにおける子育ての生態学的未来構築について意見交換を行った.報告者にとっては,Covid-19で海外渡航が2年半以上の間ほぼストップしてからは初めての海外渡航となった.CHAGSは1966年に米国のシカゴで第1回となる会議が行われて以来,数年ごとに開催されてきたもので今回が13回目の開催となる.狩猟採集社会を中心に扱う研究集会としては, もっともインテンシブなもので ,人類学,地域研究,地理学,心理学,教育学,言語学など様々な分野の狩猟採集社会研究者が世界中から一堂に集って熱心な議論が行われる.

(括弧内は発表者). 

  1. Four approaches to the analysis of gymnastic behaviors among the San of southern Africa (Akira Takada) 
  2. Everyday Classrooms (David F. Lancy) 
  3. The co-evolutionary history of birth as a hunter-gatherer cultural activity system: Evidence from the BaYaka (Adam H. Boyette, Senay Cebioǧlu, and Daša Bomjaková) 
  4. Towards a broader understanding of childhood among the Yaghan: Tracing children’s material culture and spaces in Hunter-Gatherer societies by means of Yaghan’s ethnoarchaeology (Tierra del Fuego, South America) (Blanca Pierres Tejada, Ivan Briz i Godino, and Penny Spikins) 
  5. Childcare in hunter-gatherer societies: The meaning of alloparenting in which children are raised in groups (Taro Yamauchi) 
  6. Attachment Behavior of a Baka Infant and his Participation in Song and Dance (Ayana Tanaka) 
  7. Reconsidering the Question of “Do Hunter-gatherers Teach Children?” (Koji Sonoda) 
  8. Socialization among the Batek in Kelantan, Malaysia: An Aspect of Spatial Use of the Environment (Aya Kawai) 

発表者は日本,米国,ドイツ,英国などの研究機関の所属する研究者から構成され,対象とするフィールドは南部アフリカのSan,中部アフリカのBaYakaやBaka,南アメリカのYaghan,マレーシアのBatekと様々な大陸に渡っている.バックグラウンドとなる研究分野も人類学,民族考古学,保健学などと多様で,パネルの主旨に沿った活発な議論が行われた.このパネルの発表に基づいて,学術雑誌の特集号への論文の投稿を検討中である. 

また,会場ではポスター発表のスペースも設けられ,研究する分野や地域の壁を乗り越えるような熱気のある議論が交わされた(写真2).さらに会期中には,野外の特設会場ですばらしい懇親会が催された.この懇親会では,アイルランドの伝統と創作を融合させた各種の美しく美味な料理が提供され,世界の様々な地域から訪れた参加者たちの評判も上々であった(写真3). 

写真2 ポスター会場の様子.発表をしているのはASAFAS院生の杉山由里子さん.
写真3 野外の特設会場で催された懇親会の様子.ブタの丸焼きが圧巻.

ダブリンの市内は美しい町並みと印象的であった(写真4). ただ残念なことに,この会期中にCovid-19に感染した参加者もあった.依然としてマスクが室内と野外を問わず必須の日本とは異なり,ダブリンでは学会会場でも市中でもマスク着用者が数えるほどしかいないことに驚いたが,コロナウイルス自体はかなりの密度で存在していたようであった.感染症対策についても考えさせられる催しであった.次回のCHAGS14は,3年後に米国で開催されるそうである.パネルの参加者や同行したASAFASの院生らと,これからも一層研究活動に励んで再びこの祝祭的なイベントに参加して研究発表を行うことを誓った.

写真4ダブリン市内中心部にあり,アイルランド最古の国立大学としても有名なトリニティカレッジの一角.