1. ホーム
  2. overseas-dispatch
  3. 山本始乃 大学院生 ナミビア派遣報告 (2022/11/02-2023/01/26)

ナミビア派遣報告: ヒンバ社会における子どもの学びの研究

京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科
アフリカ地域研究専攻3回生
山本始乃

派遣期間:2022年11月2日〜2023年1月26日
派遣先:ナミビア共和国:ナミビア大学
キーワード:子ども、社会化、牧畜、日常実践、学び、ナミビア

1. 研究課題について

本研究は、基盤研究S「アフリカ狩猟採集⺠・農牧⺠のコンタクトゾーンにおける⼦育ての⽣態学的未来構築」の⼀環で、ナミビア北部乾燥地域のヒンバ社会における⼦どもの暮らしを参与観察することで、牧畜⽣活の中で⼦どもがどのように知識やスキルを獲得するのかを明らかにすることを⽬指す。

2. 派遣の内容

本調査は、上記の研究課題達成に向けて今後の調査・研究を円滑に進めるための状況把握が⽬的である。そのため、今回の渡航では現地調査を⾏うための調査許可取得や調査地決めを⾏った。また今後の調査の⽅向性を明らかにするために、現地に暮らす⼈々への聞き取り調査や参与観察も⾏った。

派遣前半は、⾸都ウィンドフックに滞在して関連機関を訪れた。調査許可取得のための関連機関訪問や図書館・資料館での情報収集も⾏なった。また、調査予定地に⾏き、情報収集をすることで調査決めをした。派遣後半では、2つの村に滞在して参与観察とインタビューを⾏った。さらに、学校や幼稚園を訪れて⼦どもや関係者と交流を深めることで、今後の滞在に向けて調査の基盤を固めた。

3. 派遣中の印象に残った経験や体験

村での滞在中、ほとんどの時間を⼥の⼦と過ごしていた。彼⼥たちが⾏う仕事に私も同⾏し、⼀緒に仕事をした(写真1、2)。家庭の中で⾏われる料理、洗濯、⽔汲み、畑管理、遊牧活動は⼦どもたちが担うことも多く、⼦どもは牧畜実践や⽇常実践といった彼らの⽣活において重要な役割を占めていた。⼦どもたちは牧畜実践や⽇常実践の中で、同性や同年代と遊び、会話し、交流を深めていた。こうした実践の場は遊牧⽣活に必要な知識継承の機会となっているだけでなく、⼈々の関わり合いの場としても重要になっていると改めて実感した。

写真1 川で洗濯を⾏うヒンバの⼥性たち.
写真2 朝の搾乳の様⼦.

4. ⽬的の達成度や反省点

写真3 村の学校.

派遣の主な⽬的は、調査許可の取得と、調査におけるカウンターパート探しである。調査許可取得に関しては、政府担当機関から今年末までの調査許可、村の⾸⻑と家⻑から今後の調査を実施する許可を得た。3つの村で滞在場所と許可を得たことで今後は村間の⽐較も可能である。現地調査では、各地域/村でホストファミリーを⾒つけたため、今後の調査基盤が確⽴できた。さらに、学校や幼稚園、⼦どもたちとの関わりを得たことで、⽇常⽣活における暮らしと学びの研究が可能となっただけでなく、教育機関における⼦どもの暮らしや学びにも着⽬することが可能となった(写真3)。

今回の現地調査を⾏なった期間は、年度末からだったため学校が休みの間だった。学期中はホステルに滞在している⼦どもたちも村に帰ってきており、多くの⼦どもたちと関わることができた。また、⼦どもたちは家事や牧畜⽣活における⼿伝いを⾏なっており、多くの時間を⼦どもたちと過ごすことができた。しかし、家庭内での家事をほとんどが⼦ども主体で⾏なっており、⼦どもたちがいなくなった後、もしくは学校⽣活が始まった後の暮らしと役割については調査することができなかった。⽇常実践の中から学びを研究するだけでなく、彼らの⽣活と学校教育がどのように関わっていて、彼らの⽣活にどのような影響を与えているのかも調査する必要があると実感した。また、⼥の⼦と過ごす時間が多くなってしまい、男の⼦の暮らしや⽣活についての観察があまりできていない。

5. 今後の派遣における課題と⽬標

今回の村滞在は短期間であったため、多くの⼈を対象にした調査や観察を⾏うことができなかった。次回は、⻑期滞在を予定しており、学校⽣活と牧畜⽣活を⾏う様⼦を観察するつもりである。また、今回あまり調査できなかった男の⼦の⽣活についても調査を⾏いたいと考えている。