【2014/5/29】第9回教育・学習の人類学セミナー

更新日:2014/06/13

第9回教育・学習の人類学セミナー

2012年度より行ってきた「教育・学習の人類学セミナー」の第8回研究会を
2014年5月29日(木)に京都大学・吉田泉殿で開催いたしました.
ご参加いただきました皆様ありがとうございました.

日時:2014年5月29日(木)14:00~18:00
場所:京都大学・吉田泉殿
発表者:橋彌和秀 博士(九州大学人間環境学研究院・准教授)
要旨:”Theory of Mind”という概念においてPremackらが提唱した、「自己および他者にさまざまな心的状態を帰属してしまう」というバイアスに関する議論は、比較的早い段階で、(false beliefに代表される)「他者のこころを、自らのそれとは異なる状態のものとして階層的に理解する」という能力に関する議論へと変容しつつ、研究がおこなわれてきました。前者の議論がライルが「心の概念」で論じたような問題の延長上に捉えられるのに対して、後者の議論は、(マキャベリ的知性のような)自他の分離を前提とした戦略的知性の枠組みでの議論をけん引する機能を担ってきたように思えます。これらの流れを整理しつつ、加えて、「共感」という現象をどのように位置づけるべきか、議論させていただければと考えています。「false belief的こころの理論」が自他の分離を前提としており、西洋的な自我発達の枠組みを踏まえているのに対して、共感は、「自他を積極的に混同するメカニズム」として捉えることができるのではないか、というのが現在のところのアイディアです。たとえば「わたしたち」”We”という発話をおこなうとき、そこでは、自他の心的状況の相違が適切に無視されているように思えます。「自他を分かつシステム」と「自他を混同するシステム」のふたつを想定しながらこころの起源を論じることの可能性について、議論させていただければと思っています。

主催:文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(A)「教育・学習の文化的・生態学的基盤:リズム, 模倣, 交換の発達に関する人類学的研究」
(代表:高田明)

共催:コミュニケーションの自然誌研究会