養育者-子ども間相互行為における参与枠組みの変化
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
高田 明
本研究では,相互行為における応答の力(ability of response)が基礎となり,子どもと養育者の双方が責任(responsibility)を徐々に発達させると考えて,責任が文化的に形成される仕組みを探求する.2007年度は,妊娠中の女性および1歳児をおもな対象として,以下の3つの研究テーマについてデータの収集・分析を進める.
(1) 受胎による家族の参与枠組みの変化:受胎を契機として,妊婦とその家族の参与枠組みには何らかの変化が生じることが予想される.本研究では,おもに家庭において妊婦とその家族の相互行為を分析することを通じて,子ども(胎児)が家族の新たな構成員としての位置づけを与えられていく過程を分析する.とくに受胎に起因する女性の身体的/心理的な変化および胎児の行動が相互行為の資源としてどのように用いられるのかに注目する.
(2) やりとり活動の発達的変化:1歳児によるモノ(例,食物)のやりとり活動を分析する.やりとり活動では働きかける側と働きかけられる側が繰り返し交代するため,乳幼児は自らエージェンシーを示すとともに相手が示すエージェンシーを解釈する必要がある.乳幼児がこれを適切に行えるようになる過程に注目し,やりとり活動における行為連鎖の組織の発達的変化について分析を行う.
(3) 1歳児を対象とした模倣に関する心理学的実験場面(c.f. Tomasello, 1999)を例にとり,模倣が相互行為的にどのように組織されているのかを論じる.具体的には,模倣を(a)模倣されうる行為,(b)模倣行為,(c)それに対するアセスメントという一連の行為連鎖からなる活動とみて,模倣行為が成功した事例と失敗した事例の比較を行う.これを通じて,子どもが模倣活動において適切に振る舞うために用いている記号論的資源およびその用法について分析を行う.
高田研究室ウェブサイト
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/africa_division/kyoin/takada01.html