「共同」から「自立」へ,「注意」から「価値判断」へ
京都大学学術情報メディアセンター
高梨 克也
養育者-幼児間のインタラクションを通じて習得される、好き嫌いなどの価値判断や、善い悪いなどの道徳判断が、どのようにして徐々に子どもの自立的な判断になっていくかを解明する.(乳児の自発的な注意転換から、養育者が注意を向ける物に注意を引かれる「共同注意」へ、それがさらに子どもの自立的な注意転換へと、注意のベクトルが変化する様子をとらえる。)
共同注意や社会的参照
・結果と過程:「共同」の達成された状態や発達プロセスは研究されてきたが,これが達成されるまでの養育者-幼児間の振る舞いの連鎖関係にどのような多様性があるかが、体系的に分析されていない.
・生態学的妥当性:日常生活のどのような場面で自然に共同注意が生じるのかが解明されていない.
・対象の価値中立性:何のために共同注意が行われるかは、注視される対象にどのような価値づけがなされているのかを考慮しなければ、説明できない.
・必ずしも「共同」的過程に限定されない.(単に同じ対象に注意を惹かれていた「共同」の状態から、判断を迷うときに養育者の態度を参照し、その上で行動を決定するという、自立的な判断の状態へと、子どもが試行錯誤しつつ移行する様子が、観察できる。)
・情動発達の観点から,対象の価値づけに関する理解にアプローチできる.
・価値づけの対象は、その対象の自然な日常生活環境の中での役割とも関連している.